読書紀行 1冊目 【レネット 金色の林檎】

【レネット 金色の林檎】青い鳥文庫
 
名木田恵子/作
 
もしかしたら児童文学ほど、執筆するのが難しいものってないんじゃなかろうか。
大人ですら正解が出せない難しいテーマを、
やさしい文体で伝える能力って凄まじい。
 
大人向けの文学よりも、
心に響き、精神の糧となる作品も沢山ある
だから25歳になった今でも、
青い鳥文庫は私の大切な大切な愛読書で。
図書館や書店に行くと子どもばかりの児童書コーナーを恥を忍んで覗いてしまう
私が知りたいこと、探しているものがそこにあるのではないか
難しい、もっともらしい言葉で語るよりもずっと
心に刺さる真実の言葉たちを見落としたくないと思う
 
社会人になって、
目の前の仕事や外的な評価に振り回せる周りの人々に影響されて
自己の在り方にふと立ち止まったとき、
図書館の棚でこの本に出会った。

【レネット 金色の林檎】あらすじ
北海道のある町で、兄を事故で亡くした後
ギクシャクした息苦しい家庭に自分の居場所を見いだせない海歌。
そんな海歌の11歳の夏、
チェルノブイリ原発事故から少年セリョージャが海歌の家族のところへ療養に来た。
被災の悲しみと苦しみを背負っているはずなのに、明るさと温かさを失わないセリョージャが海歌にくれたものとは・・・?
 
キャンディキャンディの原作者でもある名木田恵子さんの作品は
言葉が繊細で、私の中にある「社会性」と「自己」に訴える
 
何よりもチェルノブイリ原発事故と、
2011年3.11のことが重なる。
あの出来事から数年がたって、
メディアに抑制されたほんの一部の報道以外、まるで「なかったこと」になっているあの事故。
日本に住んでいる私たちは、何が起こっているのか本当の意味で知る必要がある。
 

この本を読んで、一人の友人を思い出した。
高校時代、私は半年だけ広島に住んでいた。
広島の前は海外に住んでいたこともあって、
そのとき一番仲が良かったのは日本人のクラスメートではなく、3人の留学生。
そのうちの一人はカザフスタン人の少女。
聡明で、オシャレが大好きで、素敵な女の子だったけれど、
強い意志を持って留学に来ていた。
彼女の叔母さんは、チェルノブイリの被爆で18歳のときに亡くなった。
人の命を救う医者を志していた叔母さんが、
無責任なチェルノブイリ原発事故で無くなった運命から、
「原爆を経験した広島の人々の思いを生で感じて、
3.11で起こった悲しい事故を二度と繰り返さないために
反原発の思いを伝えるために、
ここに留学にきた。
平和の架け橋に私はなる。」
たった17歳で自分自身の選択に覚悟を持って生きていた彼女はかっこよかった。
目先のことに不満や焦りなんて抱かず、
淡々と、同時に楽しみながら努力を怠らなかった。
 
被災した人々の苦しみや、悲しみを本当に理解することなんて絶対不可能だ。
どんなに知ろうとしても、私は彼らにはなれない。
彼らも私にはなれない。
でも、知ろうとすること、思い馳せ、その上でどうするか考えること。
現在を必死に生きること。
誰かや何かに自分が『幸せ』でいること、『不幸』でいることを委任しないこと。
そんな当たり前の、でも現代の多くの人が忘れかけていることを
この本は思い出す手助けをしてくれる。

#青い鳥文庫#児童文学#名木田恵子

A Moment along with An eternity

1度の出会い、1冊の本、1本の口紅、 1杯の紅茶を丁寧に愛したい

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