はじめに
新卒入社三年目の電車の帰り道、ふと思った。
私は日に日に貧しくなっている。
言葉が心から消えていく感覚。
以前は触れる空気、感じる関係性、その人とのセカイを通じて
パズルのように適切に当てはまる言葉たちを自在に操れた筈なのに、
今となっては「かしこまりました」、「恐縮ですがよろしくお願い申し上げます」に始まる
仕事で使う常套句で心の箱が埋め尽くされている。
何故だろう。
私が知っているセカイはもっと豊かで鮮やかだった筈なのに、
いつのまにか色褪せた別世界にに引っ越してしまったようで悲しい。
このままではいけないと思う。
モモに出てくる灰色の男たちとは縁遠いセカイにもう一度行きたい。
心が躍る、心が動く瞬間を粗末にしない、
イメージを言葉で共有出来るセカイにもう一度行けるように、
エンデのファンタージエンやブラッドベリの浮遊感、バリオスの優しさや、萩尾望都の双子の共鳴や、イクニの愛の渇望に力を借りて、豊かな言葉を取り戻したい
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